擁壁トラブル

ホームページを通じて、寄せられる相談内容トップ5



私たちのホームページを通じて、全国から毎月100件を超える相談が寄せられます。


約5年間の相談電話、メールを集計した概略が、下記の内容です。


1.擁壁の割れ、クラック(ひび)に関すること (30%)
2.擁壁の沈下、傾きに関すること       (20%)
3.工事業者との工事内容に関すること     (20%)
4.擁壁に起因する、不動産売買に関すること  (15%)
5.設計、構造計算、法令に関すること     (10%)
6.その他                  ( 5%)



順に解説いたします。



1.擁壁の割れ、クラック(ひび)に関すること

RC擁壁、石積擁壁(間知ブロック)で一番多いい相談です。

・築造10年後以降に、擁壁の構造的な欠陥、本来割れるはずのない場所に割れが入る

・コンクリートの表面がはがれて、鉄筋が見えてくる

・伸縮目地がないため、クラックが入る


 
なぜ壊れないはずの擁壁にこんなトラブルが起きるの?


これらの原因の多くが、施工した時のコンクリートの品質に問題があります。

正しい知識と確かな技術でコンクリートを施工していない事例が、多数あります。(手抜き工事)


 
意外に思われるかも知れませんが、コンクリートは生ものです。ですから多くの現場で慣例的に「生コン」と呼ばています。


生コンクリートとは、

プラントと呼ばれるコンクリート製造工場で、「セメント・砂・骨材・水」を混ぜ合わせて製造し、専用のミキサー車で現場まで運ばれて来る、まだ固まっていないコンクリート(フレッシュコンクリート)のこと


生コンクリート=フレッシュコンクリートは、その製造過程や気候、運搬距離などから品質にバラツキ(誤差)が出るものである。



その品質のバラツキが許容範囲内か?規格外(不合格)なのか、現場検査を行うことが常識である。



1995年(平成年)に、発生しました「阪神・淡路大震災」で、高速道路や、ビルが、倒壊していた衝撃は、強烈に記憶している方も多いいと思います。


調査の結果、その一因がコンクリートの「品質・施工管理」に問題があることが判明をいたしました。


その後、全国の高速道路、鉄道、旧建物で、多くの耐震補強工事が行われました。

特に公共工事である高速道路の補強工事では、生コンクリートを施工する際に、1台ずつ「現場検査」を行い、

規格外の生コンクリートは、返品されていたのが、私の中にも強い印象として残っています。




代表的な品質無視(手抜き)の例として、



品質管理に関する正しい知識がない

・シャブコン(水を多く含んだコンクリート)

養生期間の手抜き(必要な期間、コンクリートが固まるのを待たずに、型枠を外す)

配合設計の知識がない。



上記のような手抜き工事をする多くの会社に共通しているのが、

現場を造るテクニックは有るが、品質管理の知識がない会社に多く見受けられます。


さらに怖いのが、工事業者によっては、未だに、「品質無視が手抜き工事であるという」、自覚すらないままに、工事が行われていることです


残念ながら、私の認識では、少なくみても6割以上の会社が、この「品質無視=手抜き工事」の自覚なく工事を施工しています。



2.
擁壁の沈下、倒れに関すること



・割れが入り、擁壁が傾く。

・目地のところに、異常な段差が生じる。


これらの原因は、多くが擁壁下の地盤に問題があります。


適切な地盤調査を行わずに擁壁を造る

 
上記のような手抜き工事をする多くの会社に共通しているのが、

  
設計、構造計算に関する知識がない会社に多く見受けられます。




下記の数字を見て、あなたは何を感じますか?


木造2階建て住宅=N4   高さ2.0mのRC擁壁=N10


 
専門知識がないあなたは?????で当然です。


このN4・N10とは、造る時に必要となる地盤の固さを表しています。(地盤調査結果の数値です)
(厳密には、擁壁の場合は、N値だけでは判定できません。)


どちらが固いか?・・・・N4<N10で、N10のほうが固いことを表します。


こんな感じに思われましたか? 「家のほうが擁壁よりも地盤が軟らかくてもいいんだ」



ハウスメーカー、工務店では、家を建てるときには、事前に地盤調査を必ず行います。

また、家を建てるお客様も「必要不可欠な調査」であると、認識しています。


その調査結果に応じて、家の基礎の補強工事の有無、必要な場合、はその方法が決定します。

そして、当然のこととして、新築完成後に、必要な保証を受けられます。

しかし驚くことに、多くの場合、擁壁工事では、この調査が無視されてきた歴史があります。(手抜き工事)



その転機となったのが、2005年に発覚した構造計算書偽装問題(姉歯事件)を受けてです。


2006年(平成18年)6月20日より施行された「改正建築基準法」により、擁壁工事の審査に対しても、事前の地盤調査が義務付けられました。


でも冷静になって考えてみれば、事前に地盤調査を行うことは、あたりまえだと思いませんか?


ビルや家を建てる時に、地盤調査を行わないケースはありません。これは、法律うんぬんの前に常識です。


多くのケースで、この常識が、無視されて続けていたのが、擁壁工事なのです。


その手抜きが「擁壁の沈下、倒れに関するトラブル」として表れているのです。


  

さらには、「改正建築基準法」が運用されている現在でも、この地盤調査に関する方法、知識を把握していない業者も、珍しくありません。




特に、「設計に関する、業務、知識」を有していない会社では、その大多数が、地盤調査に関する説明すら出来ない現状にあります。




3.
工事業者との工事内容に関すること



・工事内容の違い、図面がないため、出来上がりが想像と違った。

・出来上がり後、数年でトラブルが発生したが、直してもらえない。


・当初の予定にない追加工事が発生する。(追加工事の割合が、最初の契約金の1割を超える)



これらの原因は、契約書(工期、金額、内訳書、図面、約款)を結ばない(口約束)ことです。

注:契約書と同義語で「注文書」「発注書」などを、交わすケースもあります。)


擁壁工事は、そのほとんどが、高額なものです。




例えば、新車を買った経験がある方であれば、買うまでに、候補の車種のカタログを見比べたり、性能を比較したり、金額、値引き交渉をした経験をお持ちだと思います。



何故、擁壁工事に関しては、車を買う時のような、「性能比較」「カタログ比べ」「内容確認」をすることなく、工事を依頼してしまうのでしょうか?



私が相談を受けている中でその原因を整理してみると、大きく分けて、2つに集約されました。




・もともと平均的な人は、一生のうち1回しか、大きな工事は行わないので、知識と情報がない。
 (何回も家を建てる人は、稀です。擁壁工事にも同じことが言えます。)


・擁壁工事に喜びを感じる方は、いないため、どうしても金額の高低だけを基準にしがちである。
 (家や車などには、人間としての、「好み・夢・見栄・憧れ」などの、潜在的に楽しい方向の欲求が働くた め、金額だけではない、「性能、機能、デザイン」などを含め、バランスよく吟味する。)



簡単に言うと「出来ればあまりお金をかけたくない擁壁工事だし、ましてや工事を依頼することは初めてだから・・・・」ということになります。



   無理もありません。


確かに私も、自分が入院した時に、知識や経験がないため、多少、不審点があったり、不快な部分があっても、そんなものかと自分を納得させてしまい、医師の言いなりで、その医師の優劣すら考えた事がありません。


その後、人生経験を積む中で、セカンドオピニオンの存在や、病院自体にも経営方針や医師へ接客モラルを訓練している病院があることを、あとから知った経験があります。


もし次回入院するなら、そんな病院にしたいと思います。(その前に病気になりたくないけど・・・汗)


例え話が少し長くなりましてすみません。・・・大事なことなのでついつい長くなります。


工事を依頼する場合には、必ず契約書を交わしてください。


しかし、その契約書を交わす前に、事前に一人で確認してくださ
(業者のいないところで、落ち着いて内容を確認してください)


いきなり来て、契約を迫る業者は? ましてや契約書もなく工事に着手するのは、業者のモラルや責任として言語道断です。


 このような契約書無視のケースは、職人集団の会社、経営者自ら現場で作業をしている会社に多く見受けられます。(職人さんを否定しているわけではありません)



4.
擁壁に起因する、不動産売買に関すること



・建築確認がおりない。

・大丈夫だと言われた「擁壁」に数年後、トラブルが起きる。

・予定の位置に建物が建たない。

・擁壁が誰のものか、知らないで買った。



これらの原因は、多くが不動産仲介会社の担当者に正確な知識がない場合に起こります。


抽象的な説明には、注意が必要です。




お客さん「この擁壁は安全ですか?」  担当者「問題ないですよ」・「このままでも家が建ちますよ」

解説・・・検査済証の有無を確認しましょう。



あなた自身が、ダブルチェックするか、セカンドオピニオンを検討する必要があります。


自己防衛を心掛けましょう。



5.
設計、構造計算、法令に関すること



工事会社、設計会社からの設計、構造計算、法令に関する相談


構造計算業務を、行っている関係で、全国の擁壁工事にかかわる関係者から、相談が来ます。


しかし、信じれれないような相談も来ます。


工事が終わってみたら、「無許可がであることが判明した。」

「確認申請をしていなかった」

「検査済証がない」

最悪の場合は、建築確認が取得できずに、造り直したケースもあります。


これは、ある意味、私たちに事前に相談していただけることにより、トラブル回避の手助けになっていると自負してます。



このページの最後になりますが、下記の原則論をもう一度確認してください。


ほとんどのトラブルの原因は、「金額に見合った、商品をもらう」この当然の経済原則が、守られていない時に、起こります。


高い工事費を払ったのに、工事に手抜きがある。

約3%の仲介手数料を支払うのに、正確な知識や情報、リスクが分析できない。


ほとんどのリスクは、正確な知識と情報を持つことで回避できます。


擁壁トラブルに巻き込まれないよう、自己防衛をしてください。


最後までお読みいただきありがとうございました。


 
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