擁壁の基礎知識

建物と擁壁の関係

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知ってるようで意外と知らない、建物と擁壁関係を説明いたします。 所有する敷地に不適格擁壁が現存する場合は必見です。

①不適格擁壁を改善してから建物を建てる場合

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上記にある参考図をご覧ください。
敷地の高さは面している道路と同じ高さで道路の反対側の隣地境界沿いに、数十年前に築造された不適格擁壁が有ります。
(よくあるパターンの敷地です。)
このような不適格擁壁がある場合は、建物を建築する前に、擁壁の新設工事を行うのが最善です。その後建物を建てれば半永久的に問題はないでしょう。
この敷地に、新設擁壁を施工してから、建物を新築すると参考図2のようなイメージになります。
(擁壁工事は、L型RCまたは石積擁壁、その他擁壁でも問題ありません)

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上記図2のような状態になれば、半永久的に問題は有りません。しかし現実には不適格擁壁の危険に対して認識不足だったり、説明を聞いたことがなかったりして、または新設擁壁の予算を見込んでいないため工事が出来ないなどの理由から、不適格擁壁を直さないまま、建物を新築してしまう場合が有ります。 しかし、事前に擁壁に対する説明がなく土地を購入してしまったり、擁壁新設工事を行うだけの予算がない場合などは、もうどうにもならないのでしょうか? 下記に、不適格擁壁を直さないで建物を建てる場合の方法とそのリスクについて説明します。

②現状のまま建物を建てる場合

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左にある参考図3をご覧ください。この図は通常の建物基礎工事を行った場合の、不適格擁壁と建物基礎の関係を表している図です。
この参考図3のポイントは、青色で描かれた想定45度ラインです。(注1) 参考図1に描かれている不適格擁壁と平行に出来る基礎(赤色)が想定45度ラインの上にあるため、このような基礎構造では建築確認が認められず建物が建ちません。
このような場合は、想定45度ラインの下に基礎が入る位置まで、建物を道路側にずらすのも1つの方法です。
しかし敷地にゆとりがない場合はそうもいきません。可能な限り敷地内で思い描いた位置に建物を建築し、その他のスペースを車庫にしたり、庭にしてガーデニングなどを楽しみたいものです。
そこで通常は、参考図4のような建物基礎の構造にします。)

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この参考図4のポイントは、青色で描かれた想定45度ラインの下まで基礎が深くなったことです。このような基礎の形状を「深基礎」と呼びます。
このような深基礎にすることにより、地震や自然崩壊で不適格擁壁(強度が保証されていない擁壁)が崩れても、地山である45度ラインは崩壊しないと考えられるため、この45度ラインより下の地山で建物基礎を支えていれば、たとえ不適格擁壁が崩れても建物には影響しないという考えです。
またこのような不適格擁壁と建物基礎の関係は「深基礎工法」以外にも「杭工法」「地盤改良工法」などの方法があります。どの工法が採用されているかはケースバイケースが現状のようです。

(注1)この想定45度ラインは、土質により角度が変わる場合が有ります。

以上までが、不適格擁壁を直さないで建物を建てる場合の代表的な例です。

不適格擁壁が崩れた場合のリスク
この場合は、建物を建築する前に擁壁新設工事を行った場合と比べ、 おおよそ3倍~5倍の擁壁工事費が発生する場合がほとんどです。
(道路に面している不適格擁壁であれば工事金額に関するリスクは大きく低減されます。)
結果として、家を新築する前に新設擁壁工事を行えば、300万円で済んだ工事が、1000万円になる場合も珍しくなく、泣く泣く資金調達をしてローンを新たに組んだり、周辺相場よりかなり安く土地を手放したり、最悪なのはローンも組めず売ることも出来ず、ご近所や行政からクレームが来てもただただ耐え忍んでる場合も有ります。
ご両親から相続をした土地や家屋であれば致し方ない面も有りますが、このようなリスクを適格に把握したり、一度も説明を受けることなく、不適格擁壁のある土地を購入してしまう人は決して少なくありません。

このようなリスクを抱えないためにはどのようにするべきか?

・購入予定の土地に擁壁が現存する場合は、適格擁壁か非かを不動産業者または行政の窓口に問い合わせ確認する。

・不適格擁壁が現存する場合は、近隣の土地相場から新設擁壁工事費相当を値引きして土地を購入する。

・敷地の広さと不適格擁壁の位置関係を確認する(広い敷地の場合はリスクが軽減される場合が有ります。)

・土地を購入する前に専門家に相談をしリスクを的確に把握する。

・現存の建物を建て替える場合は、現存の擁壁が適格か不適格かを確認する。

・不適格擁壁の場合は、建物建築費以外に擁壁新設工事費も考えておくようにする。

・中古住宅を購入する場合もその建物を建て替えるときには、不適格擁壁が問題になりますので事前に専門家に相談してください。